サービス
  webflow ロゴFaceMFA ロゴ

Blog

事例・ブログ
April 21, 2024

スタートアップの成長ステージごとのSFA/MAとの付き合い方

はじめに

本ドキュメントは主にスタートアップの経営者、営業責任者に向けて、SFA(Sales Force Automation)やMA(Marketing Automation)との付き合い方を解説したものです。

<本ドキュメントの中でターゲットとしているスタートアップ>

・業態:BtoB

・ステージ:シードステージ~レイター(プレIPO)まで

・収益モデル:直販、サブスクリプション型

・サービス:SaaSソフトウェア

初級者に向けた解説ではないので専門用語などの解説は行いませんが、文脈により解釈がブレるワードなどは補足説明等から文意を理解して頂けますと幸いです。またSFA/MAなどに関しては当社が取り扱っているサービスをベースに用語や機能の説明を行う箇所もありますのでご注意ください。

成長ステージごとのSFA/MAとの付き合い方

まず「成長ステージごとのSFA/MAとの付き合い方」について、ざっくりとまとめました。「アーリー」や「ミドル」など各ステージの定義などは文脈により異なることもありますが、ここでは社員数をベースにステージを分類してみました。

シード期のSFA/MAについて

一般に「シード期」はシード調達を経て、「シリーズA調達」までの期間であり、製品開発、PMF(Product Market Fit)検証の期間とされています。従業員は多くても10名、シード資金として1~2年間分程度の資金が調達できている場合がほとんどです。

この場合、SFAなどのシステム投資に掛けられる余力はほとんどなく、構築・運用に掛かる時間よりも、顧客対応やサービス開発に向き合う余力を作り出す事が一番重要だったりします。

ですので、SFA/MAを導入するよりはスプレッドシートやNotionなど簡単に作成でき、無償からで利用できるサービスを検討すべきです。またデータ共有にも手間がかからないため、営業メンバーだけでなく、システム開発やバックオフィスなど社内のメンバーすべてにデータ共有を行う事ができる、という点も大きなメリットです。

 中途半端にSFA/MAに投資してしまうと、「ランニングコストを抑えるためにログインできるユーザーを制限し、営業プロセスが共有されない」などの問題が発生することもあります。共有するために別の仕組みを考えるなど、手間の掛かる事を考えるよりはシンプルに運用し、顧客の状況、ビジネスの状況はすぐに共有出来る体制を作って置くことが重要です。

また、「スプレッドシートの顧客管理はいつから行うべきか」、という問題ですが、「脳内で管理できなくなってきた時」とか「プレスリリース打ったタイミング」とか言わずに、できる限り最初期から行っていく方が望ましいです。最初期は知人や友人、前職の取引先などからヒヤリングを進めるケースも多く、必要性も感じないケースもあると思いますが、のちのちメンバーが増えた時や時間がたった時に振り返りができるように「ヒヤリング当時の仮説と結果」なども含めて登録していくことでのちのちの大きな資産や製品アイデアにつながるケースもあります。

シード期のSFA/MAで唯一活用したほうが良いポイントとしては、無償プランの範疇でWebフォームが付いているSFA/MAを契約することです。シード期であればWebサイトは「それなりのもの」というよりは「仮住まい」という立ち位置であることがほとんどです。

Hubspotなどワンパッケージ型のSFA/MAであれば無料版からWeb上で公開できるWebフォームが標準でついています(※Hubspotのロゴが付くなどの制限があります)ので、サイト構築等で無駄にコストを掛けるよりは・・・というケースもあると思います。

以下画像はHubspotの無料の基本ツールです。5名までの制限になっていますが、無料で驚くレベルまでご利用頂けることがわかると思います。

※2024年4月現在の情報です。最新情報についてはHubspot社Webサイトをご確認ください。

ポイント

  • リスト管理はスプレッドシートで十分
  • 活動結果は開発、バックオフィスにも共有すべき
  • ワンパッケージ型CRMの導入は一考の余地あり

アーリー期のSFA/MAについて

シード期を経てシリーズAラウンドの調達を行うと一般的には「アーリー期」と呼ばれるステージに突入します。いち早く事業を軌道に載せるために人員の拡充、広告予算の投下などを使って成長を加速させていく戦略を立てる企業が一般的です。

 社員は10名を超え営業、CS、マーケティングなどの専業スタッフも雇用していく必要があります。SFA/MAはこの時期の組織的な営業活動、マーケティング活動を支える大きなチカラとしての重要な要素の一つになります。経営者が事業活動の細部を把握できなくなるのもこの時期からとなるので、現在の事業の状態を正確に見極めるためにデータの登録やデータの正確性なども大きな成功要因となってきます。

 この時期のスタートアップでサブスクリプションの収益モデルを実施している企業では「ユニットエコノミクス」という考え方を元に「1顧客獲得のために費やしたコスト」と「獲得した顧客が生み出す収益」のバランスを見ていく事が重要となります。LTV(Life TimeValue)をAC(顧客獲得コスト)で割って3.0以上であれば「LTV/CAC>3x」であれば健全な水準、というのが教科書的な公式になります。SFA/MAのダッシュボードやレポートでこうした指標を出して常に事業の正確性を表現できれば何よりなのですが、実際のビジネスモデルはサブスクリプションモデルに加え受託ビジネスを並行していたり、広告から契約した顧客はLTVの点で自然流入した顧客と若干の違いがある・・・など、変数が多く一概にわかりやすい指標だけで解決できるものではありません。また各種指標についてはこの変数を変えたら、全体指標がどう変わるか、などシミュレーションを綿密に行う必要もあるため、不変のダッシュボードで指標を追いかけ続ける、という体制よりはSFA/MAで正確に入力された情報を元にExcel等で常に経営者が把握できる体制を整える、という形が個人的には良いのではないかと思っています。

また、SFA/MAの運用者を立てておく必要がある、というのもこの時期に必要なアクションとなります。この時期になると外部から営業の責任者、マーケティングの責任者を雇用する企業も増えてきますので、極論その人物がこれまでの経験で最もマネジメントしやすいと感じたSFA/MAであれば何でも良い、というのが基本方針になるかと思いますが、最低限以下のポイントを満たしておく必要があると思います。

・マーケティング活動(MA)と営業活動(SFA)が連携できるツールであること

・自社のビジネスモデルに合わせて柔軟に設定変更が可能であること

・テックタッチ※のマーケ、セールス、CS活動をサポートする機能があること

なお、「特段好みが無い」という状態であれば引き続きHubspotなどの「ワンパッケージ型」CRMを発展的に活用していく、という方針でも良いと思います。

※テックタッチとはウェブサイトやメール配信等のデジタルツールのみで営業、マーケティング、CSなどの活動を行っていく事を指します。

営業活動であればオンライン見積り機能や資料ダウンロード機能、マーケティング活動であればホワイトペーパーやメール配信、CSであればFAQや画面のナビゲーション機能などを指します。反対に常に人が対応するようなスタイルは「ハイタッチ」、テックタッチにWeb会議や電話などを組み合わせるコミュニケーションは「ロータッチ」と呼びます。

ポイント

  • ワンパッケージ型CRMでまだまだ十分
  • ユニットエコノミクスは無理にCRM上で表現できなくて良い
  • テックタッチアプローチも要検討

ミドル/グロース期のSFA/MAについて

事業が拡大期を迎え「シリーズB」の調達を行うとミドル期もしくはグロース期と呼ばれる時期になり、社員数は30名を超え、市場にも一定の認知度がある状態になってきます。SMB(中小企業)などをターゲットにしていた企業もエンタープライズ市場をターゲットにしたり、パートナー企業を通じたチャネルセールス活動も本格化してくるのもこの時期からです。

また、営業活動をロータッチの営業を主体とする「インサイドセールス」とハイタッチの営業活動を主体とする「フィールドセールス」に分業化を行い、リードの獲得を行うマーケティングや商談成約後の顧客の運用開始までをサポートするカスタマーサクセスと合わせて営業活動を細かく分業化を始めるのもこの時期からです。

 2019年に出版された書籍「The Model(ザモデル)」からこうした営業活動の分業化を「The Model型組織」などと呼称されることもありますが、こうした組織は安易に形だけを真似して導入すると細分化された組織がそれぞれに部分最適を始め、結果的に全体最適に繋がらない、という批判を受ける事もあります(※「The Model(ザモデル)」を執筆した元セールスフォース執行役員の福田氏も定期的に「安易に取り入れるのではなく本質を理解して各社にあったモデルを導入して欲しい」旨の発言を行っています)。

 この時期になるとSFA/MAは分業化による役割とKPIの明確化、業務フローの複雑化に耐えられるシステムになっている必要があります。組織や戦略で描いた形がシステムにも即時に反映されている、という体制である必要があります。個人的にはこういった複雑な組織、運用に耐えられるSFA/CRMシステムであり、技術者の確保を含め選択肢に上がって来るのは、日本国内だとおそらくSalesforceのみ、となってくると思います。SFA運用にあたり専任人材を確保して組織の変更に合わせたシステム変更やKPIの定点観測が出来る体制を整えておく必要があります。

アーリー期に「ワンパッケージ型CRM」を選択してきた企業にとって、「SFAの本格導入とそれに合わせた業務改革」というのはミドル/グロース期の企業にとって大きなミッションになります。それに合わせて、

「活動登録がおざなりな営業のエースとそれを指摘できなマネージャー」

「日々の業務に忙殺され業務改善に踏み込まないバックオフィスチーム」

「営業からインサイドチームに配属が決まり分業化に抵抗するスタッフ」

など、組織化するにあたって「抵抗勢力」が目立ってくるもこの辺りの時期からです。この時期は規模拡大に伴うCACの悪化、競合の参入など環境の変化に合わせた対策と同時並行で進めていく、という難しい舵取りが必要になるフェーズです。経営リソースは戦略や組織人事などに集中し、SFAの導入などシステムの問題は必要に応じプロのサポートなども検討してください。

 では、MAについてはどうでしょうか?MA製品についてはAccountEngagement(旧Pardot)やHubspotなどの海外の著名な製品や国内ベンダーのソリューションも含めると10種類近いラインナップが存在します。各社製品の特長が様々あり、比較に悩むケースも多いと思います。個人的には「どれを選ぶか」によってマーケティングのパフォーマンスが大きく変わる、というよりは「何をするか」の方がパフォーマンスに影響するので、極論どれを選んでも良いと思っています。

 MAの機能が前提となった施策、例えば「シナリオメール」や「トラッキング機能」などは「マーケティング業務」の中のごく一部です。実際はその業務に落とし込む前のその会社の立ち位置や社会背景、施策のセグメンテーション、仮説立て、クリエイティブ、オペレーションなどが複雑に組み合わさった上で施策の結果となるのでオペレーションの改善程度にしか効果が無い、と言って良いでしょう。

ポイント

  • SFAはSalesforceほぼ一択
  • MAはどれでもOKだがSF連携がマスト
  • 「The Model(ザモデル)」の安易な模倣はNG。自社ににあったモデル構築を

レイター期のSFA/MAについて

 IPOを目前としたプレIPOからポストIPOの期間を「レイター期」と呼び、この段階になると規模の拡大を踏まえた業務の拡大と同時に、バックオフィスや後工程を担う業務システムとのシステム間連携や、受発注の証票の保管含めた業務フロー/承認フローの整備に焦点があたって来ます。

 対応すべき領域についても「プロジェクトごとの原価管理」「月次/年次の予算実績管理」「業務フローの文書化と内部統制」など、SFA/MAだけに閉じられた世界ではなく、SFAが情報管理システムの中核として会社の業務全体を俯瞰した上でのシステム化検討を行う必要が出てきます。

 SFAはそうした経営陣や監査法人、法制度変更等の要請に合わせた改修をシステムを止める事なく行っていきつつ、改修により業務効率を低下させることがないシステムというものが求められていきます。また、同時に「誰が」「いつ」「どんな背景で」システムを変更したか等の変更改修ログについて記録しいていく管理体制の構築なども検討しなければならないため、基本的にSFAを担う担当者は複数名が専任で業務にあたりつつ、必要に応じ外部のプロフェッショナルの力なども借りながら業務を行って行く体制が求められるようになっていきます。

ポイント

  • 業務システムとの連携、ガバナンス強化が視野に
  • SFAの運用は複数人・専属が基本
  • 外部プロフェッショナルの活用も視野に

まとめ

 最後にまとめとして、いくつかポイントを記載させて頂きます。

  • スタートアップのSFA/MAはステージにより最適なSFA/MAを使い分けて行く必要がある。
  • シード期ならMA/SFAよりも速報性、共有性の点でスプレッドシートで十分。
  • アーリー期はこだわりがなければ、ワンパッケージ型SFA/CRMの採用がおすすめ。ユニットエコノミクスは無理にSFAで分析できなくても良い。
  • ミドル/グロース期は分業化、業務フロー複雑化に耐えられるシステムが重要。同時に運用体制も確保していく必要がある。
  • レイター期はシステム間連携、ガバナンス強化など会社業務全体を踏まえたシステム設計が必要。

これらを踏まえつつ、弊社が取り扱っているSFA/MAシステムをマッピングすると、以下のような形になります。

あくまで、主観に基づいた図となりますので、個々の企業様の状況によりこれが当てはまらないケースもあります事をご承知ください。

Contact

お問い合わせ
フォームよりお問い合わせください。