アメリカに本拠を置くHubSpot社が展開するHubSpotは、今や世界120ヶ国以上で愛用され企業の規模に関係なく活用できる、使い勝手の良いビジネスツールとして認知されています。HubSpotがここまで広く活用されるようになった理由は、無料で利用できる機能の豊富さにあるといえるでしょう。もちろん事業規模が大きくなり、より便利な機能を追加したければ、有料版にアップグレードして機能をプラスすることになるのですが、中小企業や個人事業主であれば無料版でも十分に有能なビジネスツールとして活用できます。今回は、HubSpotの無料版で利用可能な代表的な機能をピックアップして紹介していきます。
HubSpotはアメリカ合衆国のマサチューセッツ州ボストンに本社を置くHubSpot, Inc.が展開しているビジネスツールです。HubSpotには、無料で使えるCRM機能のほかに、以下ソフトウェアも提供しており、マーケティングや営業、カスタマーサービス、コマースの各フェーズで必要な充実した機能を取り揃えています。
・Marketing Hub(マーケティング自動化)
・Sales Hub(営業支援)
・Service Hub(カスタマーサービス支援)
・Content Hub(コンテンツ管理)
・Operations Hub(業務運用管理)
・Commerce Hub(商取引支援)
上記の機能に加え、製品全てに生成AIが搭載されていることが特徴で、業務で必要になるコンテンツを自動生成し、業務の効率化をサポートしてくれます。
HubSpotの一番の魅力は、CRMの基本機能を無料で使えることです。個人事業主や中小企業など、まだ会社の規模が大きくないときは無料版を活用し、事業の成長に合わせて有料版の機能を追加していくことができます。ここでは、HubSpotの無料版で利用できる各種機能の一部を見ていきます。
HubSpotの無料版でできることには、以下のようなものがあります。無料版と言っても、バージョンが無料と有料で分かれているわけではなく「無料で使えるCRM機能」という意味です。
単に顧客情報を管理するだけでなく、無料で、顧客管理や広告管理、ウェブサイト作成、ウェブチャットなど、営業、マーケティング、カスタマーサービスの最適化を図るための多様な機能を利用できます。なお、無料版を利用できるユーザー数は最大5人までです。
HubSpotの機能は多岐にわたるため、この記事では無料版で使える代表的な10個の機能についてご紹介します。
HubSpotでは、マーケティング、営業、カスタマーサービスのフェーズから得られる顧客データを1つのツールにまとめ、ダッシュボード上で一元管理することができます。会社名や属性データ、受注・失注の履歴、キャンペーンの応募状況、問い合わせ履歴など、あらゆる顧客データを保存し管理できます。
HubSpotには企業インサイト機能があり、コンタクトレコードや取引レコードが新たに作成されるとHubSpotの登録件数2,000万社以上のデータベースから企業情報が自動的に入力されます。担当者はプロスペクト(見込み客)や企業の情報を収集し手動で入力する手間と時間を省けます。顧客が自社のコンテンツをどのタイミングで、どのぐらい見たのかを一目で分かるようにしてくれる「アクティビティフィード」機能もあり、受注の可能性が高い見込み客のフォローをするなど、営業活動に活用できます。
HubSpotにはAIによるEメール生成機能が含まれており、無料で使えます。クリックしたくなる件名や文面が自動生成されるので、それをベースにカスタマイズして送信でき、その後の追跡・分析も簡単に行えます。効果の高かったEメールはテンプレートとして設定し、チームで共有すれば生産性の向上が期待できるでしょう。さらに、HubSpotにはメルマガを作成して配信するEメールマーケティング機能があり、無料版では1ヶ月に2,000件まで送信できます。ただし、EメールにはHubSpotのロゴが表示されてしまうので、削除すためには有料版へのアップデートが必要です。
Eメールトラッキングとは、リード顧客がEメールを開封したり、ドキュメントをダウンロードしたり、リンクをクリックしたタイミングを確認できる機能です。また、HubSpotはGmailやOutlookなどとアドオンツールにより連携可能です。GmailやOutlook、HubSpotの画面からトラッキング対象のEメールを送信したとき、見込み客のEメールに対する反応(メールやファイルの開封数、URLのクリック)を把握できます。通常Eメールは送りっぱなしで顧客の反応を測ることは難しいのですが、この機能を使えば顧客がメールの内容に興味を持っているか否か、またどのようなメールが顧客の興味を引くのかがわかります。
詳しくは「HubSpotのメール連携機能とは?メリット、デメリット、設定方法を解説」で説明しています。
専門的な知識や技術がなくても、スマートフォンやPCに最適化されたウェブサイトやLP(ランディングページ)を簡単に作成できます。HubSpotに用意されているデザイン性の高いテンプレートから好みのものを選ぶことも可能ですが、AI生成機能を使えば、自社のビジネスに関する質問に回答するだけで自動的にサイトが完成します。カスタマイズもドラッグ&ドロップで直感的に操作できるので、操作方法を学ぶ時間を大幅に減らせます。作成したサイトに対してSEO対策のアドバイスをしてくれるSEOツールも無料です。無料版では、ウェブサイトやLPにHubSpotのロゴが表示されるので、削除したい場合は有料版へのアップグレードが必要です。
フォーム作成機能も無料で使えます。ポップアップボックスや埋め込み型、ドロップダウンバナーなどのフォームタイプを選択でき、カスタマイズも項目のクリックやドラッグ&ドロップをするだけで簡単です。フォームはウェブサイトに追加するほか、単体ページでの展開も可能で、訪問者がフォームを送信するとHubSpotのデータベースに自動的に登録されます。
無料版ではフォームにHubSpotのロゴが表示されるので、削除したい場合は有料版へのアップグレードが必要です。
HubSpotでは、FacebookやInstagram、Googleなどの広告と連携することで、広告の詳細な数値はもちろん、どの広告経由でリードを獲得できたか把握できます。
また、広告キャンペーンとCRMデータを別々のシステムで管理していると費用対効果の測定に手間がかかりますが、HubSpotなら複数の広告を一元管理し、出稿した広告データのROIを表すレポート(広告ごとのコンバージョンへの貢献度)を簡単に作成できるので、広告キャンペーンごとの費用対効果を効率的に測定できます。
HubSpotでは、ウェブチャットの設置機能とチャットボットの作成が無料でできます。従来のカスタマーサポートといえば電話やEメールによる応対が主流でしたが、オペレーターの不足や運営コストの上昇から、近年では自社サイトにウェブチャットのウィンドウを設置することが増えています。チャットボットを作成して顧客からの問い合わせに応対すれば、24時間365日の顧客対応が可能になり、オペレーターは顧客のコアな質問にだけ集中して対応できるようになります。結果として取引の成約率やカスタマーサポートの満足度の改善も期待できるでしょう。
取引パイプラインツールでは、ダッシュボードで取引の一連の流れ(パイプライン)やチーム・担当者ごとの実績などを可視化できます。新規取引があれば、コンタクトレコードや会社レコードから自動的にパイプラインに反映されるので常に最新状態を維持できます。対応が必要な取引や集中すべき取引を把握でき成約率の向上に活かせます。最大100万件のコンタクト(顧客情報)を登録でき、ストレージは無制限で、利用期限もありません。
HubSpot上に蓄積されたデータを活用して、営業、マーケティング、カスタマーサービスに関連するレポートを作成できます。たとえば、営業の領域では、取引の進捗状況やリードの獲得状況、マーケティングではウェブサイトのトラフィックやEメールマーケティングの効果、カスタマーサービスではチケットの内容の分析や対応状況などの分析でき、業務改善や売上向上に役立ちます。無料ツールの状態ではオリジナルのレポートは作成することはできませんが、基本的な指標を確認するには十分な機能が備わっています。
コンテンツライブラリーを作成し、そこに資料などのドキュメントをアップロードして、チーム全員に共有できます。また、営業メールにあるリンクから見込み客がドキュメントを開くと閲覧状況の通知が届くため、未開封の顧客に再度メールを送信する、開封した顧客にアプローチをするなど、今後の営業活動に活用できます。なお、無料版ではアクセスできるドキュメントは最初の5件までです。
HubSpotでは上記の他に、以下のような機能も無料で利用可能です。
営業チームや担当者の予定が反映された予約用のリンクを顧客に共有することで、顧客自身が個人の都合に合わせてミーティングや商談の予約を取ることができます。予約されたミーティングはGoogle カレンダーやMicrosoft 365の予定表に同期され、顧客には常に最新情報が表示されます。またZoomを契約している場合送付するミーティングリンクをZoomに切り替える機能もあります。なお、無料版では1対1のミーティングリンクの作成は1件までなので、それ以上の調整が必要な場合は有料版へアップグレードする必要があります。
タスクを作成し期限や優先度、リマインダーなどを設定できます。担当者を割り当てることで、それぞれが何をやるべきかが明確になります。
見積書作成ツールを使って、デザイン性のある見積書を作成し送信できます。セットアップに時間がほとんどかからず、HubSpotのCRMに保存されている情報から見積書の項目を自動的に取り込めます。見積書に支払いリンクを埋め込むことで代金の回収も可能です。無料版では有効期限の設定ができないので、必要な場合は有料版の契約が必要です。
HubSpotが提供しているモバイルアプリを使って名刺の情報を取り込み、HubSpot上で管理できます。名刺の情報を入力する手間が省ける便利な機能です。
共有受信トレイとは、顧客とのメールやウェブチャットでのやり取りを共有の受信トレイに集め、チーム全員で共有できる機能です。全員が同じ情報を把握できるので、顧客応対に遅れが生じることなく、適切な応対が可能になります。
HubSpotの有料版は、無料版に比べて高度な機能が提供されます。たとえば、より詳細なレポーティング機能やチームメンバーとの共有機能、詳細で広範囲な分析ツールなどです。以下に有料版と無料版の違いを簡単に紹介します。
HubSpotは無料版の場合、コンテンツにロゴが入ったり、機能に制限があったりしますが、無料版を使うだけでも営業やマーケティング、カスタマーサポートが効率的になります。自社にどの機能が必要かは、実際に使ってみないとわからない点も多いので、まずは無料版から利用をはじめ、事業の拡大に合わせて有料の追加機能を検討していくのが賢い導入方法と言えるでしょう。