この記事の概要
・HubSpotのサンドボックスの概要がわかる
・標準のサンドボックスアカウントとCMSサンドボックスアカウントの違いがわかる
・サンドボックスを活用してできることや活用のメリットわかる
・CMS開発者向けサンドボックスアカウントの作成手順がわかる
サンドボックス(sandbox)とは、本来「砂場」を意味する英単語です。ITやマーケティングの分野では「本番環境とは切り離された安全なテスト用環境」を指す専門用語として使われています。HubSpotのサンドボックスも、本番環境とは完全に分離された安全なテスト環境であり、新しいアプリやワークフロー、テンプレートなどの開発・検証をリスクなく行える専用アカウントです。
特にContent Hubを利用する場合、コンテンツの構造変更やデザインのカスタマイズといった作業を、本番のデータに影響を与えずに試すことができます。サンドボックス環境では、本番アカウントの設定やデータを複製できるため、実際の運用を想定したテストが可能となり、導入前の品質確認に最適です。HubSpotでは「標準のサンドボックスアカウント」と「CMSサンドボックスアカウント」が提供されており、それぞれ機能や用途に応じて使い分けることが推奨されています。
標準のサンドボックスアカウント(Standard Sandbox Account)とは、HubSpotが提供する有料プラン向けのテスト専用アカウントであり、本番環境と同様の機能・設定を持ちながらも、テスト用途に限定して利用できる環境のことです。標準のサンドボックスアカウントには、以下のような特徴とメリットがあります。
●本番アカウントと切り離された安全な環境
本番データや既存のコンタクトに影響を与えることなく、新しい設定や開発の検証が可能です。
●設定やデータのコピーが可能
本番環境のプロパティやパイプライン、ワークフロー、Eメールテンプレート、カスタムオブジェクトなど、一部のデータをサンドボックスに複製できます。
●複数人でのテストに対応
権限管理が可能なため、チームメンバーが共同でテスト作業を行うことも容易です。
●Content Hubの開発・検証にも最適
CMSテンプレートやコンテンツ構造のカスタマイズ、動的コンテンツの表示ロジックなど、Content Hubに関わる要素を本番反映前にチェックできます。
標準のサンドボックスアカウントは、HubSpotのEnterpriseプラン(Marketing Hub、Sales Hub、Service Hubのいずれか)を契約しているユーザーが利用できます。対象となるHubのサブスクリプションに対して、1つの標準サンドボックスが提供されます。
CMSサンドボックスアカウントは、開発者向けのCMS Developer Sandboxと呼ばれる無料のサンドボックスに対して与えられるアカウントです。CMSサンドボックスアカウントには、以下のような特徴とメリットがあります。
●完全に無料で利用可能
CMSサンドボックスは、HubSpotに開発者登録を行うことで、無償で利用できます。HubSpotのContent Hubの有償契約がなくても利用可能です。
●Content Hub Enterpriseと同等の機能
Content Hub Enterpriseに相当する多くの開発機能が利用でき、実運用を想定した高度なサイト構築やテーマ開発が行えます。
●複数のドメインやページの作成が可能
複数のページやテンプレートを作成し、自由にフロントエンドの構築・テストが行えます。
●デプロイ前の動作確認に最適
カスタムモジュールの動作検証、JavaScriptやCSSの読み込みテストなど、実際の公開前に問題点を洗い出せます。
●GitHubやローカル開発と連携可能
HubSpot CLIを用いたローカル開発や、バージョン管理との連携にも対応しており、開発ワークフローを最適化できます。
ただし、CMSサンドボックスはあくまで開発用途に限定されており、以下のような制約もあります。
●コンタクトの作成やマーケティング機能の利用はできない
フォーム送信によるリード収集やEメール配信などのマーケティング機能は使用できません。
●本番ドメインへの公開不可
公開は「hubspotpagebuilder.com」などの開発用ドメインに限定され、本番用ドメインへの接続はできません。
上記のような特徴を持つサンドボックスを活用すると、以下のようなことができます。
●ワークフローや自動化の検証
HubSpotのワークフローをサンドボックスで作成・テストすることで、本番環境での誤作動や意図しないアクションを未然に防げます。
●テンプレート・テーマの開発・テスト
本番前のテスト環境で、独自のテーマやテンプレート、カスタムモジュールの開発が可能になります。ページ表示やスタイルの崩れなどを事前に確認できるため、UIの品質が向上します。
●設定のシミュレーション
プロパティやパイプライン、カスタムオブジェクトなどの設定変更をサンドボックスでシミュレーションし、運用上の影響を事前に把握することができます。
●チーム内での共同開発・レビュー
複数の担当者が同時にサンドボックスを利用することで、機能テストや画面レビューをチーム内で円滑に進めることができます。特にマーケティングや営業、開発部門の連携が必要な場合に有効な開発環境だといえるでしょう。
●本番アカウントからのデータ複製によるテスト
標準のサンドボックスでは、既存の本番アカウントからフィールド設定やワークフローのコピーが可能なため、実際の運用に近い形でテストが行えます。
※すべてではなく、一部のデータに限られます。
●エラーやリスクの事前検出
本番環境での障害や誤設定による損失を回避するため、サンドボックスでの検証は不可欠です。たとえばフォームのバリデーションや連携ツールの挙動なども確認できます。 ※validation:データや入力内容が正しい形式や条件を満たしているかを確認・検証するプロセス
サンドボックスを活用してテストを行うメリットをまとめると、以下のようになります。
●本番環境への影響を回避できる
サンドボックスは本番環境と完全に切り離されているため、設定ミスや不具合があっても実際のデータや顧客に影響を与える心配がありません。
●実運用に近い環境での検証が可能
本番データや設定を複製できるため、限りなくリアルに近い環境で機能やUIの動作検証が行えます。ワークフローやページ構成、モジュールの挙動も事前に確認できます。
●開発・修正サイクルを効率化できる
新機能やテンプレートの開発、既存構成の改善をサンドボックス上で繰り返すことで、本番反映前にクオリティを担保でき、結果として修正コストも削減できます。
●チームでの共同作業がしやすくなる
複数メンバーが同じサンドボックス内で開発・レビュー・調整を行えるため、部署横断での連携や承認プロセスがスムーズになります。
●ユーザー体験の質を事前に検証できる
Content HubのようにUXが重要なプロダクトでは、ナビゲーションや表示ロジック、レスポンシブ対応などを本番公開前に確認し、改善につなげることができます。
●セキュリティ問題やエラーの検出にも役立つ
不正な入力や設定ミスを事前に発見できるため、フォームやAPI連携などのセキュリティ面でも安心して運用準備を整えられます。
先述のように、CMSサンドボックスアカウントは主にテンプレートやテーマ、モジュールなどのフロントエンド開発を行う開発者向けに提供されている無料のテスト環境です。CMSサンドボックスアカウントの作成は、以下の手順で行います。
1.HubSpot開発者アカウントを作成
HubSpot Developersのページにアクセスし、「CMS開発者サンドボックスアカウントを作成する」をクリックし、次のページで開発者アカウント(Developer Account)を作成します。
※氏名やメールアドレス、会社名などの基本情報を入力し、メール認証に従ってアカウントを有効化します。
※すでにHubSpotアカウントを持っている場合は、同じメールアドレスで開発者アカウントを追加登録できます。
2.開発者ポータルにログイン
上記で作成したアカウントを使用し、開発者ポータルにログインします。
3.CMSサンドボックスアカウントを作成
「サンドボックスの作成」をクリックし、以下の設定(入力)を行います。
サンドボックスの名前や使用目的(CMS開発用を選択)、ドメイン(HubSpotの開発用サブドメインが自動で割り当てられます)を入力(もしくは選択)すると、入力後数分でCMSサンドボックスアカウントが有効化されます。
HubSpotのサンドボックスは、本番環境に影響を与えることなく設定やテンプレートの開発・検証ができる安全なテスト環境です。標準サンドボックスは有償プラン利用者向けで、本番の設定を一部コピー可能。CMSサンドボックスは開発者向けに無料で提供され、テーマやモジュールの構築・テストに最適です。機能検証や共同開発、リスク回避に効果的なテスト環境として活用してみてはいかがでしょうか。
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