
「グループ会社のブランドをまとめてHubSpotで管理したい」——そう考えて運用を始めたら、メールが別ブランドの顧客に届いた、レポートの数字が合わない、コンタクトのステータスが勝手に変わっている。こうした失敗は、プラットフォームの仕様を事前に把握しておけば防げるものがほとんどです。本記事では、影響を受けやすい順に注意点を整理します。
HubSpotには「ビジネスユニット(Business Units)」という機能があり、1つのアカウント内でブランドごとにマーケティング活動を分けて管理できます。ただし大前提として、これはデータを物理的に分離する機能ではありません。コンタクトや会社情報のデータベースは全ブランドで共有されます。
できること(ビジネスユニットで分けられるもの):

できないこと(注意が必要な制限):
なお、ビジネスユニット機能はMarketing Hub Enterpriseの有料アドオンです。導入を検討する際は、まず契約プランの確認が必要です。
担当者メモ:設定画面は「アカウント設定 → ブランド → ブランドを管理」から確認できます。導入前に「自社のプランにビジネスユニットが含まれているか」をサポートまたは担当CSMに確認するのが最初のステップです。

HubSpotでは、メールアドレスが同じ人物は1件のコンタクトとしてまとめられます。これはブランドが違っても同じです。
たとえば、ブランドAで「顧客(Customer)」になっている人がブランドBのフォームから問い合わせてきた場合、同一コンタクトとして統合されます。このとき標準プロパティの「ライフサイクルステージ」が上書きされてしまうリスクがあります。ブランドAでの商談が進んでいるのに、ブランドBのナーチャリングフローによって「リード」ステージに引き戻されてしまった——という事故が実際に起きています。
この問題を防ぐには、ブランドごとにカスタムプロパティを作成するのが有効です。「BrandA_ライフサイクルステージ」「BrandB_ライフサイクルステージ」という独自プロパティを用意することで、各ブランドのステータスを独立して保持できます。
また、ビジネスユニット機能を導入すると「どのブランドと接点を持ったか」を記録するプロパティが自動生成されます。フォームの隠しフィールドでこのプロパティを設定しておくと、ブランド間の誤送信を防ぐセグメント管理が実現できます。
担当者メモ:カスタムプロパティは「アカウント設定 → プロパティ」から作成できます。新しいブランドを追加するたびに、対応するプロパティをセットで作るルールを社内で定めておくと管理が楽になります。
マルチブランド運用で実際によく起きるミスと、その対策をまとめます。
ワークフローの誤爆:全ブランド共通のワークフローにブランドのフィルターを入れ忘れた結果、関係のないブランドのお客様に自動メールが届いてしまう事故です。すべてのワークフローのトリガー条件に「ビジネスユニット」または「ブランド名」の絞り込みを必ず入れることを、社内ルールとして定めましょう。
プロパティの乱立:命名規則を決めずにブランドごとにプロパティを作り続けると、類似したプロパティが数百個になり、誰も正確に使えなくなります。最初に「brandA_ で始める」などの命名ルールを決めておくことが重要です。
権限の付与しすぎ:「念のため」と広い権限を与えた結果、別ブランドの商談情報が見えてしまうリスクがあります。HubSpotのチーム機能と権限セットを使い、アクセス範囲をチーム単位で制限しましょう。
担当者メモ:新しいワークフローを作るとき、名前の先頭に「[BrandA]」「[BrandB]」とブランド名を入れるだけで、一覧での視認性と誤設定の防止につながります。小さな習慣が大きなミスを防ぎます。
「ビジネスユニットを使わず、最初から別のHubSpotアカウントを作ればよいのでは?」という疑問もよく聞かれます。どちらが向いているかは組織の状況によって異なります。
単一ポータルが向いているケース:同一法人内のブランド展開で顧客が重複する、またはクロスセルを将来的に狙いたい場合。
別ポータルが向いているケース:法人格が異なる子会社で契約上データを混在させられない場合。または後述するタイムゾーン問題が業務上許容できない場合。
担当者メモ:判断に迷ったら「ブランド間で同一の顧客が存在するか」を確認してみてください。重複がほぼないなら別ポータルの方がシンプルです。重複が多いなら単一ポータルのメリットが大きくなります。
この制約が実務に影響するのは主に、複数の国や地域にまたがってブランドを展開している会社です。国内のみで複数ブランドを運用している場合、ほぼ影響はありません。
HubSpotではタイムゾーンはポータル全体で1つしか設定できず、ブランドや事業部ごとに個別の設定はできません。
メール配信のタイミングがずれる:ポータルを日本時間(JST)で設定している場合、海外ブランドのお客様に「現地時間の朝9時」にメールを届けたくても、日本時間の9時が配信基準になります。
レポートの日付がずれる:英国(GMT)拠点での夕方の成約が、日本時間では翌日の日付で記録されてしまうなど、月次レポートの集計に誤差が生じます。
回避策として:ワークフローの「特定の時間まで待機」アクション設定時に「コンタクトのタイムゾーン」を基準に指定すると、受信者の現地時間に合わせた送信が可能になります。ただし根本的な解決にはならないため、グローバル展開が本格的な場合は別ポータルの検討も視野に入れてください。
担当者メモ:タイムゾーンの設定は「アカウント設定 → 全般 → デフォルトのタイムゾーン」で確認できます。

HubSpot 1アカウントで複数ブランドを管理するには、プラットフォームの仕様を理解した上での設計が欠かせません。特に以下の点を運用開始前に確認してください。
設計段階での疑問はHubSpotの管理者や導入支援パートナーへの相談をおすすめします。
株式会社ハレフルは、HubSpot・Salesforceの導入・運用支援を行っています。「複数ブランドの設計をどうすればいいかわからない」「現在の運用に問題がないか確認したい」といったご相談もお気軽にどうぞ。
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